2023.4.01
有機農業を始めたきっかけは、研修に行った際に春菊を食べる機会がありました。これまで春菊といえば苦いイメージしかなかったのですが、農家から「人に食べさせるんだから、味見をしないとダメだよ。」とのことで食べた時、衝撃を受けるほどおいしくて香りが良かったことは今でも鮮明に覚えています。こんなにおいしいんだ!おいしいものが作れるんだ!とこの想いは今でもスタッフに良く話しをしています。
一般的な野菜は、化学肥料や農薬を使えば安くで大量に作れてみんなの胃袋を満たすことができるという優位性がありますが、一方で農薬のほとんどを輸入しているため値段の高騰で困窮していたり、化学肥料を使うことで環境破壊に繋がることがあります。実は私は環境問題の方を重要視しています。それは、自然環境を守りたい・負荷をかけたくない・引いては人の健康のためになるのであれば有機野菜をたくさん食べて欲しいという想いです。そういうこともあり農家さんたちには「有機野菜・有機農業はこうあるべき」というメッセージは一切出していません。環境負荷を軽減するために生産者は増えて欲しいですし、増えるためにはいかに生活を楽にできるか、ということを私たちがサポートしています。
新規就農者は「有機農業で健康にいい野菜をつくりたい」「田舎暮らしがしたい」などいろいろな夢を持って飛び込んで来られます。その中で不足をしているのが「技術力」と「経営力」です。誰でもできるので参入ハードルが低い分、経営をして食べて行くというのは非常に難しいです。ここを支えるために経営ノウハウを持った専門家をマッチングして講習会や研修会を開いたり、お困りごとの相談窓口をつくっています。技術力については、地元の熟練農家たちを繋げることが私たちの役割です。例えばさつまいもであれば、地域でさつまいも部会をつくって、現状の話しをしたり技術の意見交換をしたり組合が中心になって実施することで技術力の共有や向上に繋げていきます。
今でこそ世界的にSDGsや緑の食料システム戦略など有機農業を盛り上げようと追い風の状態ではありますが、流行り廃りがあることや、ビジネス目的で新規参入をする企業もあります。そのような時流に決して巻き込まれず、自分たちの強い信念が必要です。生産者はおいしい野菜をつくるため・健康のためなど想いを持って有機農業をしています。その想いを繋いでいくのが私たちの役割です。適正な価格で農家さんから預かり、適正な価格で消費者に届ける。大きな利益は出ないけど、呼吸が長くできる状態をつくる。野菜を消費者に販売する意識だけだと物にしか見えなくなってきますが、ストーリーを預かっているので販売するというよりも“想いを届ける”という意識でスタッフには仕事と向き合って欲しいと思っています。
自然の恵みであったり、農産物ができる前の土地や肥料をみんなで「ありがとう」と農家・当社・消費者でわかちあうことが大事です。有機野菜だけを未来に繋ぎたいわけではなく、オーガニックを生き方として社会全体に共通認識としていきたい。ひとり占めするのではなく、みんなで恵みをわかちあうことがオーガニックだったらできるということから『オーガニックで未来へつなぎたい』というVisionが生まれました。